エナジードリンクの魔法を解き明かす。(後半)


エナジードリンクを行動心理で解く。

エナジードリンクの ”効く” 魔法を解き明かす、後半だ。

前半の記事は以下から。

エナジードリンクの魔法を解き明かす。(前半)
エナジードリンクと聞いて諸君は何を想像するだろうか? やる気、エネルギー、体力回復といった期待される効果。 プシュッという開放感、ビタミンの染みる味、キリっ...

前半では、含有成分の分析から、以下の結論を得た。

エナジードリンクは、劇的に効果が期待される成分を多分に含んでいるというわけではない。
むしろ清涼飲料水の一つに過ぎないとカテゴライズできる。

今回はではなぜ”効く”と感じるのか、そのメカニズムを行動心理の見地から考察したいと思う。

 

なぜ ”効く” と感じるのか。

この疑問には以下の3つの行動心理学フレームを適応して理解することが可能と考える。

・プラセボ効果
・選択バイアス
・ヴェブレン効果

結論としては、

「”効く”と信じて、自分が頑張る時にこそエナジードリンクを選び、”効く”実感を作り出している 」

ということだろう。

特段難しいことではなく、ロシアの文豪 トルストイが「If you wanna be happy, be…」と書き残したように、人間は自分がありたいと思う姿を思い、その姿を実現するのである。
人生の悲哀を描き、「幸福」と「愛」の探求に命を捧げたトルストイだけにこの言葉は重い。

少々脱線したが、それぞれのフレームについて簡単に説明していく。

 

・プラセボ効果

プラシーボ効果の方が馴染みがあるかもしれない。
本物の薬の治療効果を実験的に明らかにするために二重盲検法等で利用される手法だ。

本物の薬のように見えるが、薬として効く成分は全く入っていない偽物を提供した際に、
実際の薬を提供した時と同じような効果がでる現象のことをいう。
人体とはつくづく不思議なものだ。

エナジードリンクの文脈では以下だろう。
巧みに計算された、製品の説明文言、パッケージデザイン、色彩、缶を開ける際の音、匂い、飲み心地、ブランド世界観、はたまた周りの利用者の声…。
それらの複合作用によって、エナジードリンクは
”効く”ものだという刷り込みが無意識に構築され、
実際に含まれる成分以上の効果をまるで”実感する”魔法がかけられている可能性は大いにある。

「でも結局”効く”のだからいいじゃない。」
確かにそれを言われると辛い。

だが、プラセボの効果は信じている時だけやって来るサンタクロースのようなものだ。
いつ途切れるか分からないものに自身のパフォーマンスを全面的に委ねることは避けた方が懸命だ。

 

・選択バイアス

選択バイアスとは、観察する対象物を恣意的に抽出したため、
全体の様子を反映しない偏りのある結果になることである。

よく取り上げられる例として、第二次世界大戦で帰還した爆撃機の装甲板の話がある。
帰還した機体のダメージ状況(画像の赤い印の部分)を見た時、帰還率を高めるためにはどこに装甲板を追加すべきだろうか。

ダメージを受けている赤い部分の強化をする、という意思決定は既に選択バイアスに囚われている。
”帰還した機体”という偏った情報をもとに判断をくだしてしまっているのだ。
全体の帰還率を高めるためには、”赤い印のない部分”こそを強化する必要がある。
なぜなら”赤い印のない部分”を攻撃された機体は帰還できていないのだから。

エナジードリンクを飲む時というのは、当たり前の話だが、そもそも頑張り時であったり、疲労しているシチュエーションが多いだろう。
結果、必然的に自身が頑張るはずであるし、カフェインと糖質の興奮作用で一時的に疲労を感じづらくなりうる。

エナジードリンクを飲むという行為自体が、ブランディングやイメージ戦略によって、そもそもエナジードリンクが作用しやすいシチュエーションに誘導されているのだ。

そのバイアスがかかっているケースのみを抜き出してしまうと、公平な判断を欠いてしまう。

 

・ヴェブレン効果


聞き馴染みのない用語かも知れない。なんのことはない。平たく言うと、
「価格が高いと、よりそのものの効果を信じやすくなる」という人間心理だ。

3,000円の炊飯器と3万円の炊飯器を並べた時に、
仮に性能が同じだとしても、後者の方がより美味しく、ふっくらおどり炊きができそうな気がしてこないだろうか。(そして買ってしまう…。)

エナジードリンクを選択する時も同じである。

やる気を出したい、疲れを取りたいと思うタイミングで、より効果の高いものを選びたいと感じるのは自然な思いだ。

しかし、そこで原因と適切な対策を考えるのではなく、
とりあえず「値段が高い = 今の自分に”効く”はず」と思い込み、
他の清涼飲料水等よりも比較的高い値段に設定されているエナジードリンクに思わず手を伸ばしてしまうのは、すでに術中に嵌っている。

結果的にその「高いものが”効く”はずだ」という根拠のない思いが、前述のプラシボ効果をより強めていく。

価格が高いものは、すべからく良いものだというのは、なかなかイタイ考えであり、懐にも痛い。
価格以上の価値あるものに投資していきたいものだ。

 

 

いかがであっただろうか。

当たり前のことをなに仰々しく述べているんだ、そんなことには理解している、自分は影響されない、と思うかもしれない。

だが、人間は感情の生き物だ。
如何に論理的に物事を理解をしていても、時として感情にはあらがえない。

無意識下で上記のフレームに囚われており、
エナジードリンクが”効く”という魔法にかけられているかもしれない。

もちろんプラセボ等々は重々承知の上、一種の儀式として気合を入れる時にエナジードリンクを飲むことはあるだろう。
否定はしない。
しかし、大切な自分の身体に入れるものがどんなものか、なぜ”効く”のかを理解することに越したことはないだろう。


長くなってきた。そろそろ締めよう。

前半、後半を通じての Take away は以下の3つだ。

・エナジードリンクは一つの清涼飲料水に過ぎない。

・しかし、巧みに”効く” 仕組みが各所に散りばめられている。

・メカニズムを理解した上で、時として必要であればパフォーマンスのために心理の力を借りるのも自分次第。

 

以上、成分と行動心理からエナジードリンクの魔法を解き明かすことにトライをした。
今後の諸君の行動選択によりよいインパクトがあることを願う。

 

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